名作漫画をやたら実写映画化するあの風潮に名前をつけたい。
松本人志も言うように、基本的に原作漫画やアニメが原点にして頂点なのは間違いない。
そして実写化するにしても、映画よりドラマの方が成功することが多い気がする(あくまでも自論)(作品にもよる)
私が最近観た実写映画の中でも特に「ドラマならめちゃくちゃ名作になってただろうに…勿体なさすぎる…今からでもドラマ化してくれ…」と思った作品がこちら!!!
実写版「ReLIFE」
あらすじ
主人公・海崎新太は大学二浪と大学院進学の末に就職した会社を3カ月で退職して、途方に暮れる27歳。そんな海崎の前に「リライフ研究所」の職員と名乗る男・夜明了が現れる。
夜明「あなたはリライフの被験者に選ばれました」
リライフ研究所はニートの社会復帰プログラムを検証しているのだという。実験期間は1年間。その間は報酬も支払われる。さらに、実験結果次第では就職先も紹介してもらえるという好条件。
実験内容は「1年間、高校生になって高校に通う」こと。リライフ研究所は「見た目を高校生に変える薬」を発明しており、外見上は問題ない。さらに、実験後には被験者に関する記憶は周囲の人間から失われる。
経済的な理由もあり、海崎は実験を受けることを決意。こうして、被験者No.002 海崎新太の高校生活が始まった。
まず最初に言っときたいのは…私、原作ファンです。
comico連載時は毎週楽しみに更新を待ってた。それと同時にメインキャスト(中川大志・千葉雄大・池田エライザ)のライトファンでもある。
故にこの実写映画にめちゃくちゃ複雑な気持ちを抱いているというか…モヤモヤが止まらないので、どうにか言語化したいと思って筆をとりました…。
ここから先は原作ファンが実写映画についてグダグダ言ってる感じなので、受け付けないって方はプラウザバックでお願いします…。
あとネタバレもあるので、これから映画・原作・アニメを観ようと思ってる方はとりあえず観てきてください…映画とアニメはアマプラで観られるのでぜひ…。
じゃあ…
まず先に、この映画の好きなところについて語っときますね!!!
①キャスティングが天才
ハマり役が多過ぎて逆に怖い。
まず主演の中川大志。
撮影当時は17~18歳くらいだったと思われるけど、27歳と17歳(中身は27歳)の演じ分けが素晴らしい。そして海崎の特徴である「説教くさいお人好し感」「無自覚に人を救う感じ」もよく出てる。
中川大志くんは海崎より大神っぽいな〜と思ってたけど余裕で海崎。すごい。
次に夜明了役の千葉雄大。
正直1番期待してた。だって「仕事として17歳の高校生になりきる実年齢27歳を演る千葉雄大(本人も27歳)」ですよ???なんなら8割くらいばーちー目的で観た。
そして期待以上でした。
胡散臭さも、掴み所のない感じも、完璧に高校生に擬態してる感じも完全に夜明。
後、キャストの中で1番若く見える。
ダントツで歳上なはずやけど???当時27歳とか2000%嘘やん。
ばーちーだけ本当に若返り薬飲んでる??それとも不老不死なの??
そして日代千鶴役の平祐奈。
正直、キャスティングを見たときは「この子だけイメージ違うな」って思ってました。「きょうのキラ君」観たばっかりやったし。
そんな考えが即座に消し飛んだ。
誰がそこまでやれって言った???
完コピじゃねえか…あの笑顔をここまでの完成度でできる子とか他にいねえよ…。
こんな感じでキャスティングはほぼ完璧。もちろん高杉真宙&池田エライザも超超超超いい感じ。まじでこのメンツでドラマReLIFEやってくれ。
②冒頭(海崎27歳)の完成度が異様に高い
冒頭の海崎新太(27)は原作超えてたかもしれない。この映画の中川大志くんは17歳の姿で出ることの方が多いけど、演技的には27歳の方に感動した。
どう見ても疲れ切った27歳。
人生にドン詰まった雰囲気、就活で焦って空回りする感じ、飲みのシーンのやり切れなさも完璧に体現してる。就活時の顔がすげえ怖い。
本当に当時、現役高校生だったんですか???
前世が「就活氷河期の末にどうにか入った会社がクソブラックで精神を病んだ末にお暇をいただいた元サラリーマン(でもまだ働いてるって装ってる)」だったとしか思えない。これからも寂れた感じの役をやってほしい。
ここまでが素晴らしかったところです。次は…
「ここが惜しいからドラマやれよ」なポイント。
「惜しいところ」はほとんど、尺が足りないことによって発生していると思われます。尺さえあればもっといい作品になってたはず…という気持ちを込めてお届けします。
①ドラマチックの欠如
原作やアニメでめっちゃ盛り上がってたところが、実写だとさらっと流されてる。尺不足による説明不足&伏線不足が発生してるというか…まじで驚きと感動が薄い。
特にここは盛り上げて欲しかったというところをまとめます。
(1)大神と狩生の恋
原作ではあんなに盛り上がってたのに!!!WHY!?!?
この2人に関しては「本人たちが自分の気持ちを仄めかす場面」「2人の葛藤が現れる場面」「両片想い期のドキドキ感溢れる雰囲気」が少なかったことに尽きると思う。
まだ狩生はいい。尺は短かったけど、大神を明らかに意識してるような描写があったし、日代に嫉妬するくだりも映像化されてた(実写だけ観た人にひどい子と思われてないか心配やけど)
でもピアスのくだりも欲しかったな…(強欲)
問題は大神。
そもそも恋愛描写どうこうの前に、大神自体があんまり丁寧に描かれてない。せっかく高杉真宙を使ってるのに…。
原作大神は「恋愛に疎くて狩生の気持ちも自分の気持ちも分かってない」「家庭の事情もあって恋愛に踏み出す余裕と勇気がない」「でも狩生に好意を抱いてて、無意識に意味深な行動をかます」って感じで、明るさ・優等生・鈍チン・天然タラシ・ヘタレを併せ持つ最強キャラ。
ただのチャラ男じゃないからそこんとこよろしく!!!(何目線??)
そんな大神が無意識行動で狩生と視聴者をドキドキさせるシーンが足りねえ!!!
まっひーをちゃんと使え!!!
そして海崎の言葉をきっかけに自分の気持ちに気づいた大神が、狩生を変に意識したり…なかなか踏み出せずにもだもだしたり…たどたどしい告白を打ち込んだり…って感じのムズキュンも足りねえ!!!
まっひーをちゃんと使え!!!(2回目)
(2)日代の正体について
この場面は映画版でも起承転結の「転」に当たる部分だったと思います。
「日代の正体」を推理して盛り上がっていたcomicoのコメント欄を思うと…映画版のあっさり感がとても惜しくてな…。
何と言っても伏線がない。
「日代が実はリライフ被験者で、夜明がサポートを担っていたこと」「しかも失敗例だったNo.001が実験を一年延期していたこと」
これが判明したのは夜明と日代が一緒に映って話している場面です。
そこまでに「日代さんってリライフ被験者なのかな…」って思わせるような伏線があんまりない。
例えば原作だと「夜明と日代はなぜか仲が良い(日代が夜明を了と呼んでいる)」とかがあったけど、映画だとそれもなく…急に判明した感が否めない。
(3)海崎と日代の恋
ここが1番勿体無かった…。
原作の中で海崎と日代の恋愛に常に付いて回っていたのが…
「合法JK問題」
「見た目17歳とはいえ27歳の自分が、リアルガチ17歳を好きになってしまった」と2人共が思っていたのです(本当はアラサー同士の恋愛だったのにね!!)
普通なら27歳の大人と17歳の高校生の恋愛って躊躇するし、手を出したらお縄じゃないですか。でもリライフ中は一応高校生扱いやし、恋愛する分には自由。原作海崎も最初は「合法でJKと恋愛できる!」とワクワクしていました。
でも日代への想いが募るほどに「27歳の自分が17歳の日代に想いを告げて良いはずがない」と悩むようになる。
しかもリライフ被験者に関する記憶は相手から消えてしまう。だから海崎と一緒に過ごす時間が長いほど、相手の青春の思い出は思い出せないものになっていく。
青春の儚さと尊さを知っている海崎だからこそ「青春を大切にしてほしい。そのために自分と過ごす時間は短い方がいい。」と思うようになる。
これは日代も同じで、映画版でも海崎の告白を断った理由として同じような想いを吐露していました。
だからこそ日代と海崎は割と早い段階から両思いなのに、お互い想いを伝えることを躊躇していたのです…。
めちゃくちゃ切なかった…。
それなのに映画の海崎ときたら!!!!
ストレートに恋して!!青く嫉妬して!!勢いで告りやがった!!
葛藤皆無かよ!!!お前いつの間に中身まで高校生になったんや??
私はおっさんくさく葛藤する中川大志が見たかったんじゃ!!!
これじゃ普通の高校生同士の恋愛と変わらん!!もっと切なくさせてくれよ!!
中川大志ほど人を切なくさせるのが上手い若手俳優おらんぞ???ナメんな!!!(G線クラスタ心の叫び)
②小野屋杏
俺たちの小野屋は尺調整の犠牲になったのだ…。
いや分かってますよ??尺的に明らかに無理だもの。恐らく最初に削ったのは小野屋の設定ですよね??一番削りやすいし、そこ削っても話は成り立つもんね??
でも正直めちゃくちゃ残念だった。だって映画の感じやとそもそも小野屋がいる必要性がないんやもん…岡崎紗絵のムダ遣い…。
え、じゃあ原作の小野屋はどんなかって??
…ここからは原作の重大なネタバレなので気をつけてくださいね…?
小野屋杏、リライフ研究所の職員です
つまり夜明さんの同僚です
そして実年齢26歳です
あまりにも映画と扱いが違うでしょ??
というか、メイン6人中4人が中身アラサーなんだぜ…?
原作の小野屋はリライフ研究所職員で、途中から日代のサポート担当になります。
最初のうちは普通のJKとして振舞っていて、実写とあんまり変わらない感じでした。
でも、海崎がリアルJKに本当に手を出さないか確認するために自ら迫ったり、日代の嫉妬心を煽って海崎への気持ちを試したりと場をかき回すスタンドプレーが増えていき……業を煮やした夜明に正体をバラされたという流れ。
つまり、小野屋は夜明と同じく「海崎と日代の両方がReLIFE被験者」と知っている存在。
被験者に干渉しすぎる節もあるので、夜明以上に海崎&日代にニヤニヤ&ヤキモキしてます。まさに読者。
そしてポーカーフェイス夜明が(色んな意味で)表情を崩す数少ない相手でもある。
単に過干渉が多くて怒らせがちっていうのもあるけど、夜明がメンタルズタボロになった時に叱咤激励するなど、抱え込みがちな夜明を支える存在だったりもする。
「読者(視聴者)の代弁者」「夜明の数少ない理解者」っていう大切な役目を担ってたキャラだったので、映画でそこがばっさり削られたのがしんどかったです…。
そして…私は!!中川大志に迫る岡崎紗絵を!!見たかったんですよ!!!!
だってパーフェクトワールドで瀬戸康史に迫ってたのが最高だったから…
③重い設定がほぼ全部消えてる
これ、実写のキラキラ青春映画としては正解だと思うんです…。
でも!!だからこそ原作ファンは複雑というか…重いところを消しすぎたことによって、ReLIFEの本来のテーマや良さも伝わらない感じになってた。
まず原作で一番重かったのは海崎が会社を辞めた理由(=先輩の死)
先輩の死の原因について、映画では「退職後の電車事故」でしたが、原作だと「嫌がらせを苦にした結果、会社で首吊り自殺」
遺体の第一発見者となった海崎はトラウマを抱えることに。しかも会社はこの自殺を軽く見て、嫌がらせの主犯は反省すらせず…。
全力で漆黒クソ会社とクソ上司を燃やしたい(連載当時の感情が爆発)
そんな会社に絶望して自主退職した海崎ですが、その後も「ネクタイを締められない」「就活で退職理由を聞かれた時に遺体がフラッシュバックする」などの苦しみを背負うこととなり、就活が上手くいかなかったのもそれが原因。
この設定を変えたのは英断だったと思います。
さすがに重すぎる。漫画でもキツかったのに、実写でやられたらこっちのメンタルも死ぬ。
そして「ここの重みは描いて欲しかった」と思ったのが…
・日代が被験者になった理由
・実験が1年延長された理由
映画版では日代のバックグラウンドはほとんど描かれませんでした。
これじゃ日代を大人に設定した意味があまりないというか…「海崎と倫理的に問題がない形でくっつけたかったから、日代も大人設定にした」と思われ兼ねない。
そんなの絶対嫌だ!!
そもそもリライフ実験は「大人が若返って青春をやり直す」ことではなく、「活躍できるポテンシャルを持ってるけど、何かに躓いてドロップアウトした優秀なニートを社会復帰させる」ことを目的としています。
だから「ただ高校生活を楽しむ」のではなく、「高校生活を通して被験者の問題を解決させること、被験者自身を成長させること」が実験及び本作のストーリーの要。
このテーマをはっきりさせるためにも、日代のバックグラウンドと成長はしっかり描くべきだったなぁ…と思いました(全く描写が無いわけではないけど)
日代は映画内でもコミュニケーション能力の無さが描かれていましたが、リライフへの参加、実験延長もそれが原因です。
元々頭が良くて優秀な人材でしたが、コミュニケーションの齟齬から周囲と衝突し、自主退職を迫られるように。同様のことが数回続き、履歴書の職歴欄も長くなっていく。そうなると就活も上手くいかない。途方に暮れていたところで夜明に声をかけられたということです。
1年目の実験でもコミュニケーション能力不足によって、同級生に対するいじめを深刻化させてしまいます。そこから人と接することに更に難しさを感じるようになり、1年目の実験で結果を出す(=社会復帰できる程のコミュニケーション能力をつける)ことができなかった。その反省を胸に2年目に突入して本編に至ると…。
なんてこった!!!
確かに日代の実験の理由は、海崎ほどのドラマ性はない。キラキラ青春映画でそこを詳しく語ったら雰囲気が壊れるかもしれない。
でも、そもそも「ReLIFE」の映画化って時点でキラキラなだけの青春映画を作るのは無理だったと思うんです…だって元々が「ドロップアウトした大人の成長物語」なんだもの…。
そして原作の夜宵草先生が海崎と日代の2人を被験者に設定したのには、恋愛要素以外にも理由があると思ってます。
海崎はコミュニケーション能力が高くて面倒見も良いけど、「ブラック企業」「先輩の死」という外的要因でドロップアウトした人間。
逆に日代は自身の性格という内的要因で周囲を敵に回した結果、ドロップアウトに追い込まれた人間。
2人は「社会からドロップアウトした」という意味では同じですが、原因はむしろ逆。
創作物として盛り上がるのは「トラウマを乗り越える」海崎のストーリーかもしれないけど、現実では日代と同様の理由で苦しい状況に立たされる人も少なくはないはず。
全くタイプが違う2人が関わることで互いの成長(問題解決)に繋がっていく様を描きたかったんじゃないかな…と思っております。
映画版は全く描けてなかったとは言わないけど…恋愛キラキラ描写や謎のダンスより、もっと日代に時間を割いて欲しかった!!…というのが本音です。
とりあえず全体的に「尺が足りなくて大事なところを削らざるを得なかった」「キラキラ映画として売り出そうとしすぎた」のが惜しくなった理由だと思いました!!(総括)
ただ、キャスティングはめっちゃ良かったし、原作の内容的にもティーンより大人に刺さると思うので…「超絶リアル志向でドラマ化してほしい」と心から願っております…!!深夜ドラマで全然大丈夫なんで!!!!
comico掲載の原作は終わってるけど、書籍化が亀並みのスピードなので、実はまだ最終巻出てません!!!!次がラストです!!!
最終巻が出るタイミングでドラマ化とか良くないっすか???局の偉い方々!!よろしくお願いいたします!!!!!