あずきごはんの日記

ドラマや映画の感想、推しへの愛を叫ぶブログです。

【仮面ライダー鎧武】呉島光実という少年

高杉真宙の役が性癖にブッ刺さる。それは今に始まった話ではなかった。『セトウツミ 』『モンテ・クリスト伯』『サギデカ』『見えない目撃者』…ありとあらゆる作品で情緒を狂わせてきた高杉真宙。それは絶賛放送中のドラマ『わたしのお嫁くん』も例外ではなかった。

 

私は高杉真宙の顔が好きだ。声も好きだし、演技も好き。特に『サギデカ』と『セトウツミ 』では演技のやばさと役のとんでもなさに圧倒されて、しばらく高杉真宙のことしか考えられなくなった。そんな高杉真宙がプライム帯ドラマで男性キャスト一番手。「お嫁くん」として君臨している。可愛さの暴力。思考回路はショート寸前。テンションの上昇は止まるところを知らない。

そして、私はTwitterという名の森に、軽い気持ちで妄言をぶん投げた。今思うと、この時、既に運命を選んでしまっていたのだ。

 

鳴り止まない通知、大量の引用RTとリプ、いつのまにか1500人ほど増えていたフォロワー。「やべぇところに手突っ込んだな」と悟った。布教チャンスを嗅ぎつけたオタクほど怖いものはない。囲まれた私は引くに引けなくなり、東映特撮の公式YouTubeチャンネルへと向かった。

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それが『仮面ライダー鎧武』および呉島光実との出会いだった。

 

【呉島光実との出会い】

ミッチこと呉島光実の第一印象は「かわいい」「クソデカ感情を隠せ」「闇堕ちしそう」の3つだ。

序盤の光実はとにかくかわいい。学校では無愛想で嫌味な優等生なのに、チーム鎧武の中では可愛げMAXのインテリ弟キャラ。特に今作の主人公・葛葉紘汰との初期の会話シーンでは、ディズニープリンセス顔負けのキラキラ笑顔を浮かべていた。「光実は最終的に誰かしらと2人きりの世界を目指すようになる」という情報は事前に得ていたので、その相手は確実に紘汰だと確信した。違ったけど。

一方で彼のチームや紘汰、ヒロインの舞に向けたクソデカ感情は、とても危ういものにも見えた。

「(チームは)僕にとっての全てです」

「大切な人が傷つくよりも、自分が傷ついた方がいい、そうだよね。紘汰さん。」

「それなら舞さんが振り向いてくれるんでしょ?だったら構わない。僕はどんなことだって…」

このようなクソデカな台詞群が最序盤にきてる時点で、もう嫌な予感しかしない。闇堕ちの兆候がありすぎる。この予感は的中し、光実は険しい道を歩んでいくことになった。仲間を欺き、様々な陣営を渡り歩いて他人を利用し、大きな罪も背負った。かわいい弟キャラだったはずの彼が何故そんなことになってしまったのか。呉島光実の物語を読み解いていきたい。

 

【呉島光実という少年】

・光実が戦った理由

仮面ライダー鎧武』に登場するアーマードライダー達は、みんな違った目的・理想・願いを持っており、それが彼らを戦いへと駆り立てる。

そして光実の願いは2つ。「チームの日常を守ること」と「舞に振り向いてもらうこと」。みんなを守りたい紘太、弱者を踏み躙る社会を壊したい戒斗と比べると、かなり自分本位な願いだ。そしてチームの外にいる人々のことは一切考えていない。光実は自分が大切だと思うもの以外への関心が薄く、「守りたい人だけ守れればいい」「価値のある人間だけが残ればいい」という考えを持っていた。そこが彼の子どもらしい視野の狭さであり、ヒーローたる紘汰との大きな違いである。

 

・とにかくチームが大好き

光実がチーム鎧武にこだわるのは、チームが彼にとって心から安心して過ごせる場所だからだ。光実は常に「呉島家の優等生」を求められていた。兄・貴虎からはユグドラシルで自分の右腕として働く将来を望まれ、そのために無駄なものは全て切り捨てるようにと教育を受けた。学校でも家でも、抑圧されながら生きていたのだ。そんな光実にとって、本当の自分に戻れる場所であるチーム鎧武は何よりも大切な宝物だったのだろう。だからチームを守る紘太に憧れ、自分もチームの役に立てるようになりたいと願い、戦極ドライバーに手を伸ばした。

しかし、物語中盤、チームを取り巻く環境は大きく変わっていく。謂れのない罪で糾弾されてインベスゲームが廃止されたり、抗争が終わったことで他チームとの交流が増えたり。最終的にはオーバーロードによる世界滅亡の危機までやってきてしまう。正直もう幸せな日常を送れるような状況ではない。それでも光実は諦めることができなかった。

チームが大切で、チームで過ごす時間が大好きだったからこそ、光実は「幸せな日常を確実に守れる状況を作りたい」と願った。たとえ、どんな手を使ってでも。

 

・隠し事と裏切り

チームの日常を守るために光実が選んだ手段は「隠蔽」。「真実を隠すことで人々の心の安寧を守る。戦うのは力を持つ自分達だけでいい。」というのが光実の考え方だった。この主張は「真実を明かしてみんなで協力すべきだ」という紘汰の意見と真っ向から対立しており、2人の間の溝を深める原因にもなった。

光実はある種正しい。人々が心の安寧を失えば、争いが生まれ、社会は崩壊する。事実、物語終盤で世界が危機に陥った際、人々は混乱し、街からは人が消えた。そして外部から紘汰たちを支援してくれる者はほとんどいなかった。なんなら臭い物に蓋をするかのようにミサイルが打ち込まれた。「みんなで協力」は絵空事だったのだ。

そして情報を与えないことは、チームを維持する上でも適切な行動だと思う。知らない方が幸せなことは確かに存在するし、知ってしまったことで失われる笑顔や壊れる関係性もあるだろう。チームメンバーだけを守ることは、「みんな」を守ることより簡単だ。そして情報を知る者が少ないほど成功率は上がる。光実はチーム鎧武の「不変」を願い、そのために情報を統制した。全ては変わらない日常と大切な人たちの笑顔のため。しかし、チームメンバー達は光実に守られるほどやわではなかった。

光実はチームを守りたいと思っていたが、チームは守られることを望んでいなかった。紘太の希望を信じて進もうとするチームメンバー達は、紘太と同じく「光実の思い通りには動かない人達」だったのだ。光実は健気で一生懸命だった。それでも物事は思い通りに進まない。変わり続ける環境の中で「不変」を貫くのはもはや不可能だった。そして、追い詰められた光実は本来の目的を見失っていった。

 

光実の隠し事と裏切り行為の数は極Escalationし、事態を悪化させた。貴虎や湊耀子のように、途中で方向転換できていれば…とつい思ってしまう。それでも光実は嘘をつくことを止められなかった。その理由は「仲間に嫌われたくない」という子どもじみたものだった。

光実はたくさん嘘をつき、紘汰や舞の邪魔をした。自分が守りたいもののために最善だと思える方法をとってきたつもりだったのだろう。しかし、みんなはそれを望んでおらず、彼を待っていたのは舞からのビンタだった。この時、光実は心の奥底で自分の間違いに気付いただろう。考え自体が間違っていた訳ではない。やり方が良くなかったのだ。それでも、もう戻れない。本当のことを話したら、自分の嘘もバレる。みんなから嫌われる。チーム鎧武の中に自分の居場所がなくなってしまう。だから嘘を貫き通すしかない。

利己的で子どもっぽい考え。とてもヒーローとは呼べない。それでも私は光実のこういうところが好きだ。間違えるのも、間違いを認められないのも、間違ったまま進むしかないのも、人間らしくて子どもらしくて愛おしい。ヒーローの紘汰やカリスマの戒斗だけでは足りない。どこまでも人間らしい光実がいるからこそ『仮面ライダー鎧武』は名作なのだ。

 

・「ヒーロー」との対立

今のままではチームの「日常」を守れないと悟った光実。彼はその原因が紘汰にあると結論づけた。

光実「希望っていうのはタチの悪い病気だ。それも人に伝染する。紘汰さん、あなたはね、そうやって病原菌を撒き散らしてるんですよ。」

ここまでの暴言として出力されたのは、光実が追い詰められていたからだと思うが、発言の内容自体はきっと彼がずっと思っていたことだ。

葛葉紘汰はどこまでも真っ直ぐで眩しい太陽のような男だ。光実もかつてはその光に憧れ、導かれた少年だった。しかし、その太陽は自分の光で焼かれる者がいることに気付かない。そして、自分の考えや発言がとてつもなく大きな影響力を持っていることも自覚していないのだ。

光実にとっての紘汰は憧れのヒーローであると共に、自分の劣等感を煽る存在でもあった。そして彼が大きな影響力を持つことも知っていた。チームのみんなや舞はもちろん、敵対勢力にいた貴虎までも紘汰の理想に付き従っていく。その上、紘汰が思い描く理想は光実にとって甘くて浅慮な絵空事だった。そんなものにチームのみんなや兄を奪われてはたまったものではない。そう考えるのも理解できない話ではない。

 

そして、光実にはもう1つ譲れないものがあった。舞の視線である。光実にとって、紘汰は舞の視線を独り占めにする存在でもあった。その上、紘太と舞はチーム内で「お似合いのカップル」扱いをされている。「舞さんが振り向いてくれるならどんなことだってやる」光実にとってはかなり面白くない状況だ。物語の序盤からあった嫉妬心はどんどん大きくなっていき、舞からのビンタによってついに弾けた。

紘汰の光に焼き尽くされてボロボロになった。紘汰のせいで舞に構ってもらえない。紘汰は舞に「希望」を見せて、無茶な戦いに巻き込もうとしている。「理由」を手に入れた光実は、ヒーローを討つことを決めたのである。

 

・光実がたどり着いた結末

光実は人を利用し続けてきた。相手の思惑を読み、情報を管理し、権力をちらつかせ、自分の思うように動かそうとしてきた。そして思い通りにならない邪魔者は切り捨てた。そうするうち、彼は様々なものを失った。居場所だったはずのチームは居心地の悪い場所になり、憧れだったヒーローは倒すべき敵になり、たった1人の兄さえもその手で討ってしまった。そんな光実に残ったのは、舞への執着心だけだった。

光実にとって、舞は最後の砦だった。自分が戦ったことの意味を証明してくれる存在だった。何も得られず、何も救えず、1人でがんじがらめになった子ども。オーバーロードと組んで、人類を裏切った子ども。もう後戻りできないと悟ってしまった。実際のところ、舞と紘太は光実を諦めてはいなかった。2人ともそのことを伝えてくれていた。それでも光実は止まれない。「唯一、価値のある人間」である舞だけでも救うことができたら、どうしようもない自分にも存在価値があったと思える。そんな心理が働いていたのかもしれない。

そして追い詰められた光実はよりによって戦極凌馬に頼り、人間としての舞の命が失われる原因を作ってしまった。平常時なら凌馬の根拠のない言葉なんて信じなかっただろう。人間は極限まで追い詰められると視野と判断能力がクソ雑魚になるということがよく分かる。

 

そうして結局全てを失ってしまった光実。大切なものを全て彼自身の手で壊してしまった。

光実は自分を曝け出す勇気がなかったから嘘をついた。嘘をついたことで誰にも頼れなくなり、頼れる人間がいなかったから暴走した。辛いことを受け入れて進もうとする人々の中で、ただ1人進むことを拒んだ。だから何も守れず、何も成し遂げられなかった。

空回る光実の姿は痛々しかった。それでも彼がチームと舞を大切に思っていたことは事実で、それらを守るために必死になったことも事実だ。それが全く報われないのは流石に後味が悪い。どうにかしてほしい。そんな身勝手な想いに『仮面ライダー鎧武』は答えてくれた。

 

【光実が与えられた物語の中での役目】

光実に与えられた役目がある。それは挫折と成長である。 

正直、物語の最序盤から嫌な予感はしていた。悪い大人に利用されるとしたら光実だろうと。その予想は的中した。そして、それこそが『仮面ライダー鎧武』における光実の役目でもあったのだ。

凌馬「貴虎に教わらなかったのか?何故悪い子に育っちゃいけないか、その理由を。嘘つき、卑怯者…そういう悪い子どもこそ、本当に悪い大人の格好の餌食になるからさ!」

あまりにも分かりやすいテーマの名言化。さすがプロフェッサーと呼ばれた男。現実社会においても非行少年・少女は反社会的な組織に利用されたり、犯罪に巻き込まれたりしやすい。それは視聴者の子ども達にとっても他人事ではない。光実は子どもたちの反面教師として作られたキャラクターなのだ。

光実は人を利用しているつもりだったが、実際は利用された側面の方が大きかった。それでも彼が犯した罪や、裏切りによって生まれたわだかまりは消えない。戒斗は自分の理想のために命を燃やし、紘汰と舞は人類を救うために地球を去った。危機は去り、人々には「日常」が戻ってきた。そして全てを失った光実は、たった1人で放り出されてしまった。

 

しかし、世界が救われても、光実の物語は終わらなかった。彼にはまだ役目があったのだ。そのために、ある男がピックアップ召喚された。

SSR呉島貴虎。光実との直接対決に敗れて海の藻屑になったはずの男がなんと生きていたのだ。貴虎は光実の最も重い罪「兄殺し」を担う存在。彼の生存は光実の新たな光となった。貴虎が光実の闇を祓う一方、成長のきっかけをくれた者もいた。片岡愛之助である。

呉島兄弟対決の直後、急に捩じ込まれたサッカー映画。そこに登場するめっちゃ強い敵こと片岡愛之助が沢芽市に攻め込んできたのだ。この時、地球に紘汰はおらず、戦極ドライバーとゲネシスドライバーもほとんど残っていなかった。貴虎からドライバーを借りた城乃内が必死で食らいつくもラブりんには敵わず、戦況は絶望的だった。そこで立ち上がったのが光実である。一度は人類を裏切った光実が、今度こそ人類のために「変身」したのだ。

紘汰「変身だよ!貴虎、今の自分が許せないなら新しい自分に変わればいい。」

紘汰が呉島兄弟に贈った台詞で『仮面ライダー鎧武』のテーマ。光実の「変身」はこの台詞を体現している。何も救えなかった自分が許せないなら、新しい自分に変わって今度こそ人類を救えばいい。あれだけやらかした光実だって変身できたんだから、視聴者のみんなもきっと変われる。光実の成長は作品のテーマを強化する上で必要不可欠なものだったのだ。

そして、光実にはまだやり残したことがあった。一方的な暴言と暴力で傷つけてしまったヒーロー・紘汰との和解である。紘汰が地球を去った以上、こちらは流石に不可能かと思えたが…。

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ウルトラマン葛葉紘汰の爆誕である。なんと地球のピンチを聞きつけ、遥か宇宙の彼方から飛んできちゃったのだ。「君が望むなら、それは強く応えてくれるのだ」とは言うが、いくらなんでも面倒見が良すぎる。脳内の米津玄師と作中の湘南乃風が大盛り上がりを見せる中、紘汰と光実の共闘が繰り広げられた。

物語序盤は当たり前のようにあった2人の共闘が「奇跡」になってしまった。世界の危機が去ったとしても、あの頃の日常は戻ってこない。神様になってしまった紘汰はもう変身ポーズを決めない。光実が引き止めても、地球に残ってはくれない。それでも、紘汰と光実はずっと友達だし、光実にとっての紘汰はヒーローなのだ。紘汰から武器を借りて戦い、仲間の元へと帰っていった光実。まさかここまで後味の良い終わり方になるとは思わなかった。

 

仮面ライダー鎧武』は道を踏み外した者を見捨てない。悩んで、迷って、大切な人を傷つけて、たくさん後悔した光実だからこそ守れるものがある。そんなふうに感じさせてくれる物語だった。子どもたちの反面教師であると共に、彼らの未来のifでもあった光実。そんな彼をヒーローに「変身」させてくれたこの作品が大好きだ。

 

【光実と他のキャラクターの関係性について】

・光実と紘汰

ヒーローに憧れる子どもと子どもに救われたヒーロー。愛に飢えた弟とジェネリック兄さん。光実が紘汰の光に焼き尽くされた話は散々したので、ここからはプラスの部分だけを話していきたい。

光実は紘汰に憧れてヒーローを目指し、紘汰はそんな光実に勇気づけられて立ち上がることができた。光実は紘汰の光に焼かれて苦しんだし、紘汰も光実にたくさん傷つけられた。それでも、2人が「変身」できたのはお互いの存在があったからこそだ。

中盤以降の光実は、紘汰の楽観的思想と影響力の強さに危機感を覚え排除しようとした。しかしそんな光実自身も紘汰からの影響を受けやすい子どもだったのだ。

「すみません紘汰さん。やっぱり僕は、何もやり遂げることができませんでした」

「そんなことねえよミッチ。お前、すげえ頑張ったじゃねえか」

本編の最終回、片岡愛之助に負けそうになった光実に紘汰が贈った言葉。紘汰は凌馬に嘲笑われた光実の「一生懸命」を肯定した。人類のために変身し、戦った光実を認めてくれた。ヒーローからの一言は光実にとって大きな救いとなっただろう。光実は再び立ち上がり、紘汰と共に戦うことができた。

 

そして光実にとっての紘汰はジェネリック兄さんでもあった。紘汰と貴虎はどこか似ている。紘汰を兄のように慕うことで、実の兄との不和から目を背けていたのかもしれない。「ミッチは賢いな」と褒めてくれる紘汰は、光実の自己肯定感の向上にも一役買っていたはずだ。紘汰と光実の疑似兄弟関係は2人が対立した後も消えることはなかった。

羽が舞い散る中での抱擁と赦し。いくらなんでも宗教画がすぎる。紘汰は光実の苦しみに寄り添い、光実が自分で物事を決められないほど追い詰められていると気づいた。最後まで光実を諦めず、彼の命を吸う危険なロックシードを壊した。

「バカだなミッチ。これから先、どれだけ長く歩くか分かってんのか?それに比べりゃ大したことねえって。」

何も伝えられず海に沈んでしまった貴虎。彼の代わりに紘汰が伝えてくれた言葉があまりにも優しくて、涙で琵琶湖ができてしまった。「ミッチは賢いな」から「バカだなミッチ」になったのがあまりにもエモい。

「実の兄のやり残したことを引き継ぐジャネリック兄さん概念」で散々殴っておきながら、結局実の兄は生きていた。正直少し拍子抜けしたが、貴虎が生きて帰れたのも紘汰が精神世界で説得してくれたおかげである。紘汰は呉島兄弟をつなぐ架け橋となったのだった。共闘の末にラブりんを倒した後、紘汰は「貴虎と仲良くな」と言葉を残した。姉が唯一の家族だった紘汰からの「たった1人の兄弟を大切にしろ」というメッセージ、あまりにも重い。

 

・光実と貴虎

押し付ける兄と伝えようとしなかった弟。

武将っぽい名前、武力を用いた兄弟の直接対決、抑圧された弟、乗り越える対象として描かれる兄…この2人、やたら中世の武士色が強い。作風が完全に『鎌倉殿の十三人』だった。

呉島兄弟は初期から断絶フラグの匂わせがすごかった。貴虎は光実の意志を聞かずに意見を押し付けていたし、光実は自分の意志を伝えることを放棄していた。

光実「みんな未来が不安なんだよ。誰かの言いなりになってただ流されてるだけで、どんな大人になれるのかも想像つかない。だから今一番楽しいと思えることをして、本当に大事なものがなんなのか探してる。…そんなふうに僕には見えるけど。」

貴虎「お前は未来に不安などない。呉島家の一員として、なすべきことの意味と価値をきちんとわきまえている。そうだな、光実。それがあのお前とクズどもとの違いだ。忘れるな。あんな連中とは住む世界が違うのだと。」

イカロックシード窃盗事件後の兄弟の会話。光実は明確なサインを出しつつも、言葉の真意を伝えることができない。貴虎は光実の言葉に含められた意味を汲み取らず、自分の価値観を押し付ける。この時のユグドラシルはビートライダーズをベルト開発のための実験台として使い、インベス関連事件の犯人としての汚名を着せようとしていた。だから貴虎は弟をそこから遠ざけようとしたのだろう。理想を説くのは期待しているから。心配だから自分の手元に置いておきたいという気持ちもあったのかもしれない。要するに、この兄は弟のことが大切なのだ。しかし、何も知らない思春期の少年が一方的な兄心を適切に受け取れるかどうかはまた別の話である。 

貴虎は「弟を想う兄」だが、「弟にとって良い兄」というわけではない。一方的に押し付けるだけの未来予想図と「無駄なものは切り捨てろ」という教えは、光実の心の豊かさと余裕を奪った。貴虎は自分の間違いを認め、柔軟に考え方を変えられる大人でもある。光実が意思表示をすればきっと理解してくれただろう。しかし、親代わりでもあった10歳上の兄に異を唱えるのは、光実にとってあまりにもハードルが高い。その上、貴虎は声と口調に説得力がありすぎる。あの声で何か言われたら「それが正しいんだ」と思い込んでしまいそうな魔力だ。だから光実は兄の言葉を否定できず、抑圧されたまま流されてしまったのかもしれない。 

 

兄弟の関係は拗れに拗れ、やがて引き返せないところまで到達した。光実が貴虎を見殺しにしたあの時から、兄弟対決の運命は決まっていたのかもしれない。

光実「僕はユグドラシルのプロジェクトアークを引き継いでいるようなものだよ。ただし今度は人類の半分が救われる。…褒めてくれたって良いくらいじゃないか。」

貴虎「そうか、それが俺から学んだ結論か。お前は俺の影、俺の犯してきた過ちの全てだ」

光実「僕が兄さんの影だって言うなら、僕はあんたを消すことでしか本物になれないじゃないか。」

貴虎「そうだな。だからこそお前はここで終わる。」

本当にひどい。バッドコミュニケーションすぎてB'zもドン引きする。光実は兄を否定しながらも、兄からの愛を求めていた。認められたかったし、褒められたかった。だから「チームと舞を守る手段」としてプロジェクトアークを選んだのかもしれない。そこに追い討ちをかけるかのような「お前は俺の影だ」発言。弟を止めるための手段として「終わらせる」ことを選ぶのが、光実を諦めなかった紘汰との対比になっていてあまりにも残酷である。兄に見限られたことを悟った光実はもう止まらなかった。一方、貴虎は最後の最後で兄心を捨てることができなかった。

光実にとどめを刺さなかったという意味では紘汰と同じだが、結局この時の貴虎は何も伝えられなかった。とどめを指す直前、光実の求めていたものを悟った貴虎。倒れた場所が地面なら、海に沈まなければ、何かを伝えられたのかもしれない。しかしそれは叶わず、戦闘前の貴虎の言葉は呪いとして光実の中に刻まれた。

そして光実は、兄殺しの罪と貴虎の幻覚に苦しめられることになった。 

貴虎の幻覚は辛辣だった。光実の言動と思考と存在を否定する言葉を並び連ねた。光実にとっての兄はそういう存在だったのかと悲しくなる一方、光実が良心を捨てられず自分の選んだ道に後悔していることも伝わってきた。光実は誰かに責められたかったのだろうか。自分を否定する言葉に抗っていなければ、罪悪感に押しつぶされて壊れてしまうと思ったのかもしれない。舞を救うという最後の目的を果たすまで、光実は壊れるわけにはいかなかった。貴虎の幻覚は光実の罪悪感の化身であり、光実の心を守るための存在だった。しかし、光実が全てを失ったことで、幻覚の言葉は大きく変化した。

貴虎「お前は遠ざかったのではない。ずっと同じ場所にしがみつこうとして、立ち止まっていただけだ。そんなお前を置き去りにして、みんな先へと進んでいった。それぞれの運命に立ち向かう道を選んでな。」

光実「そうやってあんたは、いつまで僕を嘲笑ってれば気が済むんだ」

貴虎「お前こそ、いつまで私の影に縋り付くつもりだ。何も成し遂げられなかった屈辱。だが、そんな痛みは取るに足らない。世界の命運を背負う羽目になった者たちよりも、お前はどれだけ恵まれていることか。」「お前は何者にもなれなかった。その意味を、もう一度よく考えてみろ」

幻覚は光実の罪悪感の化身。つまり彼の潜在意識でもある。光実は分かっていたのだ。自分が立ち止まっていたこと。紘汰や舞はもっと苦しんでいること。自分が今でも兄を求め、兄に縋り付くしかない子どもであること。兄を求めて泣く光実の姿は、幼い子どものようで、この子にはまだ兄が必要なのだと悟った。それなのにもう貴虎はいない。光実が自分の手で葬ってしまったからだ。あまりにも残酷な結末…と思っていたのだが…。

海に沈んでたところを助けられるなんてあまりにも運が良い。決め台詞を「私は不死身の貴虎だ!!!!」に変更してほしい。

紘汰から「変身だよ」の金言を賜った貴虎は見事生き返り、ぎこちないながらも光実との関係を修復しようと動き始めた。確かに貴虎のバッドコミュニケーションっぷりは稲葉浩志も匙を投げるレベルだったが、仕方のない部分もあった。彼もまだ若く、多忙である。仕事に手一杯で、自分の面倒しか見ていられないような状態だったのだ。だからこそ、自分の理想を説き、背中を見せることしかできなかったのだろう。私も社会人だから貴虎の気持ちはめちゃくちゃ分かる。なんなら弟と話すだけ偉いと思う。しかし貴虎は弟を追い詰めてしまったことを反省し、「変身」しようとしたのだ。死にかけて学んだことは今後に活かしていけばいい。貴虎は「大人も失敗をすること」「大人も成長できること」を体現したキャラクターであり、大人の視聴者に勇気を与えてくれる存在になったのだ。

 

・光実とカイト

対比が多かった2人。現状維持の光実と現状破壊の戒斗はとにかく相性が悪い。戒斗が光実を「敵」認定するシーンや、人間としての舞の死を知るシーンでは、2人の違いが特に如実に表れている。しかし、戒斗はただ光実を否定するだけの男ではない。

戒斗は弱さを嫌い強さを求めて突き進む男だが、「弱者を踏み躙る社会を許さない」という信念もある。オーバーロードや凌馬に利用されて、全てを失った光実を見て何か思うところがあったのだろう。例え相容れない相手でも理不尽に踏み躙られた者は見過ごせない。そんな戒斗の甘さが垣間見える名場面だ。あんなもの見せられたら、成長して本当のヒーローになった光実の姿を戒斗にも見せたかったと思ってしまう。もう叶わないのに。つらい。

 

・光実と舞

光実の舞に対する感情は変化していった。

最初はただ振り向いてほしいと思っていた。そして、その笑顔を守りたいとも願った。光実は舞のことを想いながら変身していたのだ。

そして物語終盤、紘汰と対立し、自分の思い通りにならない鎧武メンバーを切り捨てたことで、光実の舞への執着心は強くなった。この頃の光実は「舞だけが価値のある人間であり、舞だけがいれば良い」と考えていた。この感情は追い詰められたからこそ生まれたものだ。平和な日常が保たれていれば、チームの中に居場所があれば、ここまでの感情は育たなかったのではないかと思われる。

さらに、紘汰との直接対決の前後でまたも心境に変化が生まれた。舞は何も得られなかった光実にとっての最後の光だ。舞だけでも守ることができれば、兄の影だと言われた自分にも生きる意味があると思える。振り向いてくれなくても、二度と会えなくなったとしても、舞のために命を燃やしたい。もはや信仰の域に達している。光実の中での舞は「好きな人」から「自分を救ってくれる女神様」のような存在に変わっていった。舞が神に近い存在である「始まりの女」になったことを思うと、なんとも皮肉な展開である。

 

少し話は逸れるが、「始まりの女」である舞は戒斗や紘汰にとっても運命の女であった。

戒斗にとっての舞は自分と似た痛みを持ち、互いの強さを認め合う者。クソデカ感情は順調に育ち、最終的には「舞を手に入れるためだけに世界を滅ぼしてもいい」などというセリフまで飛び出した。

戒斗「舞、お前が欲しい。黄金の果実を俺に渡せ」

舞「私と果実、本当に欲しいのはどっち?」

戒斗「選ばないし、区別もしない。俺は果実を掴んだ最強の男として、お前を手に入れる」

これは精神世界での2人の会話なのだが、いくらなんでも少女漫画指数が高すぎる。腐った社会を壊したいという理想のために強さを求め続けた戒斗。理想を叶えるための手段である黄金の果実と区別できないくらい、戒斗の中で舞の存在は大きくなっていたのだ。果実も好きな人も両方欲しいだなんてとんでもなく強欲で自分勝手で魔王的で最高だ。もし私が舞だったら、このロマンティック展開に乗っかって世界を滅ぼしていた。理性を保った舞があまりにも偉い。

一方、紘汰にとっての舞は、同じ希望を見つめ、互いに励まし合って共に戦う戦友であった。舞は無茶な戦いを続ける紘汰をずっと心配していた。何も知らずに仲間を殺してしまった紘汰を抱きしめ、苦しみを分かち合った。紘汰が人間をやめようとした際は最後まで引き留めようとした。そして紘汰は世界の命運を背負って押しつぶされそうになった舞に「一緒に戦おう」と声をかけた。圧巻の主ヒロである。

三者三様の関係性はどれも尊い。それでも、舞が選んだのは紘汰の見せた希望だった。みんなを救いたかった紘汰と誰にも傷ついて欲しくなかった舞は似た者同士だ。2人はいなくなってしまった戒斗の想いも背負って、より良い未来のために進んでいった。故郷である地球を光実達の手に託して。

 

ここまで約15000字を使って、呉島光実と『仮面ライダー鎧武』の話をしてきた。ちょっとした卒論みたいな長さだが、語りたいことはまだたくさんある。紘汰と戒斗のデュエットがやばすぎる話、戒斗がモテすぎている話、紘汰と姉の話、貴虎と凌馬のクソでか関係性の話、突然ぶち込まれたキカイダーの話…全てを話そうとすると一生かかりそうなので、ここで一度筆をおくことにする。最後に『仮面ライダー鎧武』を観せるために私を囲んだオタクたちに最大級の感謝を伝えたい。本当にありがとうございました。正直、最初はちょっと怖かったけど。

 

 

【すずめの戸締まり・ネタバレ感想】チャラメガネとネコチャンと無機物(椅子)に三方向から殴られる

大ヒット上映中の映画『すずめの戸締まり』。これまでに観てきた『君の名は。』『秒速5センチメートル』『言の葉の庭』『天気の子』を押さえ、(私の中では)新海誠界の圧倒的トップに躍り出た作品である。

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ストーリーもテーマもキャラクターも最高で、私はチャラメガネ(CV.神木隆之介)とネコチャン(神様)と無機物(CV.松村北斗)に三方向からタコ殴りにされて瀕死状態となった。

国民的大ヒット映画がダイレクトにブッ刺さったのは久しぶりなので、記念も兼ねて、今作の好きなところや私なりの解釈をネタバレ有りで語りまくりたいと思う。まだ『すずめの戸締まり』を観ていない方は今すぐ画面を閉じて映画館に行ってほしい。ただ、今作には「東日本大震災」に関する描写がしっかり組み込まれているので、その辺りは注意して自衛してもらいたい。人によってはかなりキツイと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【チャラメガネ(神木隆之介)について】

「茶髪メガネピアスタバコの神木隆之介のことしか考えられない」「芹澤朋也が性癖を狂わせる」

公開初日の私のタイムラインはそんな言葉で埋め尽くされた。気になった私は予告を確認した…が…

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そんな奴おらんぞ???集団幻覚か??

 

神木くんといえば『君の名は』で"男子高校生の中にいる女子高校生"の演技が大絶賛され、前作『天気の子』でもシークレット出演を果たして観客を大いに沸かせた男。そんな大御所がすずめの戸締まりにも出演?しかも瀧くん役ではない??集団幻覚だと思っていた。劇場に行くまでは。

 

神木隆之介、おる。

演技があまりにも自然で瀧くんとも全く違うので、前情報がなかったら多分気づかなかった。

 

茶髪・丸メガネ・タバコ・ピアス・細マッチョ…ビジュアルの時点で属性てんこ盛りだが、ここに「教育学部の大学生」「面倒見の鬼(教採を飛んだ友人を片道7時間かけて迎えにいく)」もプラスされる。愛車はボロくて赤いスポーツカーだし、サービスエリアでソフトクリームとご当地ラーメンも食う。しかも声帯が神木隆之介

TLを震撼させたのも納得なとんでもなさっぷり。正直、初見時はこいつが衝撃的すぎてちゃんと拾えなかった展開や台詞が大量にあった。

君の名は。』の頃から感じてはいたが、やはり新海誠とは神木隆之介の趣味が合うらしい。実写でもチャラメガネやってほしい。

 

ところでこの芹澤朋也、観客の性癖ぶち壊し係および後半の展開盛り上げ名誉会長以外にも、重要な役割を担っている。

それは痛みを知らない傍観者の視点を作品に持ち込むことである。

 

芹澤絡みで特に印象的なのが、すずめの実家(東北)に向かう車の中で懐メロを流し、口ずさむシーン。彼は作中で「BGMはゲストに合わせて流す」と話しており、パンフレットでは新海誠監督の口から「懐メロは芹澤が環さんに合わせてチョイスしたため、彼の趣味ではない」という旨が語られている。芹澤は場の空気を和ませるためにも懐メロを歌い続けるが、うろ覚えの部分も多いのか、あやふやな歌詞で誤魔化すようになっていく。これは気配り力の高さと、知らない歌詞を「ニャー」で誤魔化すあざとさが垣間見える魅力大爆発シーンだが、それ以外の意味もあるのではないかと考えてしまう。

「芹澤が口ずさむ懐メロの歌詞が、東北に近づくに連れてどんどんあやふやになっていく」状況は、「人々の中で東日本大震災の記憶が薄れていっている」現実と被るものがあるのだ。

 

そしてもう一つ印象的なのが、すずめの横で被災地を見ながら「綺麗な場所」というシーン。この発言は被災者であるすずめの心をざわつかせることとなる。

あれだけ人間ができている芹澤でさえ、ふとした瞬間に地雷を踏み抜いてしまうことがあるのだ。芹澤が震災を経験したのか否かは分からないが、作中の描写から見て大きな傷を負ってはいないであろうことは感じ取れる。そしてこの作品に感動した私自身も「震災の痛みを知らない傍観者」の1人なのだ。実際に被害を受けた方々と私では、同じものを見た時の感覚が全然違う。自分の尺度だけで物事を見ていると、無自覚に誰かを傷つけてしまうかもしれない。そんなことを改めて考えさせられた。

 

「当事者の痛みを知らず、無遠慮に地雷を踏み抜いてしまう傍観者」は作品に深みをもたらすが、観客(特に震災の被害を受けた人たち)にとって大きなストレスになってしまう危険性も高い。だからこそ芹澤朋也は観客に広く深く愛される性癖ぶち壊し大学生として爆誕したのかもしれない。だとしたら作劇とキャラメイクが上手すぎる。新海誠こわい。

 

【ネコチャン(神)について】

すずめがなんの気無しに与えた善意に一目惚れした結果、自らの役割を草太さんに押し付けて日本列島を危険に晒した純真無垢な神様。今作のマスコット…のように見える白猫・ダイジンの正体を一言で表すとこのようになる。

 

椅子にされて凍結までした草太さんからするとめちゃくちゃ迷惑な存在だが、私はこのダイジンのことをどうしても嫌いになれない。むしろあの子の幸せについてずっと考えてしまう。

 

ダイジンは長い間「要石(かなめいし)」として日本の災厄(災害)を抑えるための「機関」になっていた。それを解き放ち「うちの子になる?」と迎え入れたのはすずめだ。日本の一般家庭で暮らす高校生からしたら、ガリガリに痩せた猫にご飯をあげて声をかけるのはなんの気なしの行為だ。そもそも猫に言葉が通じるとも思っていないだろう。でも長い間ひとりぼっちで「機関」としての役目を果たしていた神様にとって、すずめの言葉は重すぎた。痩せ細った姿から、ふっくらと愛らしい姿になり、人間の言葉まで話すようになったダイジン。草太さんに「要石」の役目を押し付けたのも、「草太さん(新たな要石)を犠牲にしなければ多くの人が死ぬ」と伝えてすずめを追い詰めたのも、全ては「すずめの子になるため」だ。

このダイジンとすずめの関係性は、すずめと環さんの関係性に置き換えることができる。被災して一人ぼっちになったすずめに「うちの子になろう」と言葉をかけた環さん。ボロボロだったすずめが環さんの言葉によって生かされたように、すずめの言葉が「一人きりで役割を果たす機関」であったダイジンに「すずめと一緒にいたい」という自我を与えてしまったのだ。

 

すずめの言葉に縋って自由の身となったダイジンだったが、彼女の口から出たのは「大嫌い」「二度と話しかけないで」という拒絶だった。ダイジンは深く傷つき、ふっくらとした愛らしい姿と人間の言葉は再び失われてしまった。それでもなお、すずめを追いかけ、すずめの側にいることを望んだダイジン。その姿は亡くなった母を探して常世(死後の世界)に迷い込んでしまった幼いすずめと被って見えた。

だからこそサダイジンは環さんから「私の人生返して」「うちの子になろうと言ったことは覚えていない」という言葉を引き出して、すずめに突き出したのだろう。自分が放ってしまった言葉の重さを思い知らせるために。そんなサダイジンに唸り声をあげて怒るダイジンがあまりにも健気で涙腺がぶち壊れてしまった。

ダイジンがすずめと共に幸せに生きる道はなかったのかとつい考えてしまうが、「すずめの手で元に戻して」と望んだのはダイジン自身だ。「日本」という土地のためではなく、大好きなすずめのために要石になったことが唯一の救いなのかもしれない。

かけまくしもかしこき日不見の神よ。遠つ御祖の産土よ。久しく拝領つかまつったこの山河。かしこみかしこみ、謹んで……ダイジンがすずめの家でゴロゴロしてご飯を食べてすずめと遊んでたまに草太さんと喧嘩する平和な日常、お頼み申す!!!

 

【無機物(松村北斗)について】

最後に今作の目玉であり主人公の1人とも言える存在、宗像草太について。長髪ロン毛がっしり体格美麗お兄さんが開始20分で3本脚の子ども用椅子になってしまうという、斬新かつ不憫すぎる展開。魅力的なイケメンがこんなにも早く椅子になっちゃって大丈夫なのか…?と思っていたが、何の問題もなかった。

 

だって椅子がかわいいから

こんなにかわいい無機物、滅多にお目にかかれない。『アラジン』の魔法の絨毯くんばりにかわいい。この見た目でバッタバッタ走りながらも、声帯は松村北斗で発言は紳士なお兄さんというアンバランスさがたまらなく魅力的。椅子なのにかわいい、かわいいのにイケメン、イケメンなのに椅子。唯一無二すぎる最高の無機物が爆誕してしまった。

 

意図せず最高の存在になってしまった草太さんだが、彼には無機物のままではいられない理由があった。まずこの姿だと「閉じ師」の仕事が満足にできない。椅子の脚じゃ扉を押さえることも鍵を閉めることもままならず、すずめと行動を共にするようになってからは呪文詠唱&ダイジン確保に専念することになった。更に「教師になる」という夢も叶えられない。閉じ師も教師も頑張ろうとしている草太さんに金銭的な援助をしたいが、無機物相手ではそんな妄想すら捗らない。

そして何より、無機物のままでは草太さんが草太さんとしての人生を歩めない。椅子の姿にされた挙句、「要石」の役目も押し付けられた草太さん。彼を待つのは、日本の災害を抑えるため、自我も意志も失った無機物となって、同じ場所に刺さり続ける未来だけだ。

要石になる直前、草太さんはすずめに言葉を残す。

 

「ここで終わるのか。こんなところで。でも君と会えた…」

 

草太さんの言葉はここで途切れ、東京に住む沢山の人々のために沈黙することになる。この言葉を聞いた時、私が想像した言葉の続きは以下のような物だった。

「でも君と会えたから幸せだった」

人々を守るため、危険を顧みず扉を締め続けてきた草太さん。そんな彼がすずめと巡り会えた喜びと旅の思い出を噛み締めながら、100万人を守るための犠牲となる。そういう綺麗で残酷な物語を思い描いてしまったのだ。しかし、彼の心のうちは全然違った。

 

「ここで終わるのか。こんなところで。でも君と会えたのに。死にたくない。死ぬのは怖い。」

お爺さんとの思い出や芹澤と過ごす日常、すずめとの旅を振り返りながら、涙混じりの声で「生きたい」と叫ぶ草太さん。彼の本心を聞いて、同じように泣きながら「私も死ぬのは怖い」と叫ぶすずめ。そんなすずめの心に触れて、「万人のための犠牲となる役目(要石)」に戻ることを決めたダイジン。感情と思いやりの連鎖。こんなんもう泣くしかない。

他人のために人知れず命を危険に晒し続けてきた草太さんと、「人が生きるか死ぬかは運」「死ぬことより草太さんのいない世界の方が怖い」と考えて無茶な行動を取るすずめはどこか似ている。芹澤の言葉を借りるならば、2人とも「自分を雑に扱っている」節があるのだ。特にすずめは、被災経験と母親の死によってこのような考え方になってしまった可能性が高い。彼女は自分が死ぬことより、大切な人に置いて行かれて1人で生きることの方がつらいと思っていたのだ。

そんな2人がお互いと出会って、旅先で様々な人の想いに触れて、生に執着するようになった。命が仮初のものだと知っていても、1分1秒でも長く生きながらえたいと思えた。あまりにも最高。一生一緒に生きてほしい。推しカプ爆誕。ハレルヤ。

 

今回は私が特に狂わされたチャラメガネ・ネコチャン・無機物に絞って話をしたが、『すずめの戸締まり』の魅力はそこだけではない。まず椅子とすずめが日本中を旅するロードムービー要素が楽しいし、そこで出会う様々な女性たちはみんな魅力的だ。すずめの良き保護者であろうと頑張ってきた環さんの物語も涙腺に来る。そして何より、震災が残した傷跡に真正面から向き合い、日本を代表するエンタメ作品として描ききった新海誠監督に、最大限の賛辞を送りたい。

一番好きな佐藤健を決めろ!T1グランプリ!!

本日3月21日は国民の彼氏こと佐藤健の誕生日だ。佐藤健の誕生日なんだからそりゃあ国民の祝日にもなる。そんなめでたき日に佐藤健のことを語らずに何を語るのか…ということで、一番好きな健を決める祭典・T1グランプリを開催しようと思う。

 

T1グランプリを開催するにあたって参考にしたものがある。それはたけてれ(佐藤健LINE LIVE等で配信していた番組・今はYouTubeに切り替わってる)の「恋人にしたい佐藤健の役ランキング」だ。まずはこのランキングについて話していきたい。

 

1位 小笠原秋(カノジョは嘘を愛しすぎてる)

健自身も「少女漫画はつよい」と言っておられたが、確かに健がガチ少女漫画をやるのはレアだ(後に恋つづで再び封印が解かれることとなる)。私はこの映画にあまりハマれず、秋のこともずっっっと「この男いけすかね〜〜〜」とか思っていたが、落ち込んだ時に1人ラジコンするとこはおもしれー男ポイントが高くてディ・モールト ベネ。今なら愛せるかもしれない。

 

2位 緋村剣心(るろうに剣心)

健といえば剣心。剣心といえば健。

たけてれでは「剣心に守られたい」「薫になりたい」という意見が出ていたが、私は恵殿になって剣心の健康を死守したい。シンプルに蒼井優が好きだから蒼井優になりたいというのもある。

 

3位 萩尾律(半分青い)

うちの母が健を好きになったきっかけ。

朝ドラを毎回観る派の母はこれまで朝ドラのストーリーにしか興味がなかった。それが半青の放送期間中は「この佐藤健いいね」「とにかく佐藤健の律がかっこいい。制服がめちゃくちゃ似合う。」「佐藤健の映画(8年越しの花嫁)超良かった!!観て!!」など常に健のことを話していた。今でも朝ドラの話になると「朝ドラで一番かっこいいのは律やから…」みたいなこと言ってくる。もちろん母も健LINEは登録済。親子で健の彼女(自称)をやっている。

 

ちなみに健強火担・神木くんさんの推しは柴田剣人(メイちゃんの執事)。わかる。ツンデレ当て馬健は至高。

 

ではここからは私が脳内ポイズンベリーして考えたT1グランプリの結果を発表しようと思う。最初はベスト5で考えていたが、どうしても6位のやつを入れたくなってしまったのでベスト6となった。7位以降の役ももちろん大好きだ。

それでは…結果発表〜〜〜〜〜〜!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

6位:天堂浬(恋はつづくよどこまでも)

イレーーギュラーー!!!!!健の顔がいい!!!色んな役と経験を積んだ健がやるからこそ社会現象になった役。「キスシーンはアクション。るろ剣で培った全てのノウハウを恋つづでぶつけた。左手は鞘の位置。」とか言ってた。再履修する際は左手に注目するしかない。例の母も恋つづ履修中は「佐藤健がかっこいい」以外の語彙を喪失していた。あとドラマ後に必ずやっていたSugar(健と擬似ビデオ通話ができる夢のようなアプリ)でも、その美貌と発言で全ての視聴者を"健の女(概念)"に仕立て上げた。健の美は人類を退化させてしまうらしい。危険すぎる。

 

5位:中原尚志(8年越しの花嫁)

リアルに結婚したい佐藤健1位。

一途で優しくて彼女想いな彼氏。記憶も自我も失った彼女を8年間も支え続けるほどの強靭な愛を持つ。そしてタイトルにもあるように、こちらは実話ベース。リアルにこんな素晴らしい男が実在してたんだから、まだまだ地球も捨てたもんじゃない。恋つづで人類を退化させた健と8年越しの花嫁で人類に希望を与えた健、どっちも健なんだから末恐ろしい。人類の存続は健の手にかかっていると言っても過言ではない。

 

4位:獅子神皓(いぬやしき)

こっちは本当の意味で人類を脅かす健。「バン(低音)」と声に出すだけで画面越しからでも人を殺めることのできるテロリスト。基本的に殺されたくはないが、仮にどうしても殺される運命なら、相手はこの佐藤健がいい。善悪の判断が曖昧で精神的に孤独でもある子どもに突然"力"が宿ってしまったら…その子どもが唯一の支えを失ってしまったら…待っているのは破滅だけだ。追い詰められて暴走していく様が可哀想でもあり、魅力的でもあり…。共感できない部分も多々あるし怖いけど、憎めない。SPECの一十一が好きな人は獅子神も好きだと思う。自分が歪むきっかけを作った張本人達ではなく、幸せそうな他人を手にかけてしまうというのが幼くて危うくて人間らしくて最高。本郷奏多が普通の男子高校生やってるのでその辺りも必見。

 

3位:麦田章(義母と娘のブルース)

生まれついてのナチュラルボーングッドルッキング愛されガイ。「佐藤健ってイケメンじゃない役(麦田も顔はいいという設定やけど)もできたんだ」と世間に強く認知させ、同時期にやっていた萩尾律(半分、青い)とのギャップで世界を震撼させた。

前半のモブキャラっぷりも、後半のアホかわいさも最高。ただこれは単に健がやばいというだけではなく、良一さん(竹野内豊)という究極にかっこいい男がいたからこそ、麦田の愛されガイっぷりが輝いたのではないかとも考えている。良一さんと結婚したい。『天皇の料理番』に続いて、森下佳子先生は健をイケメンじゃない感じに書くことに命をかけてるんだと思う。

 

2位:深井平太(Q10)

病気がきっかけで無気力系になったかと思いきや、実は素直で優しくて面倒見も良くて、でも弱い部分も持ってる男子高校生の佐藤健(当時ドラマ初主演)。いくらなんでも佐藤健が映えすぎる。そしてQ10という作品自体が私にとって特別な存在でもある。エモさで窒息させられそうになる名作なので、ぜひ観ていただきたい。

 

この頃は同時期に龍馬伝が放送されており、やはり岡田以蔵とのギャップで世界が揺れた。健、世界を震撼させすぎる。そろそろ大陸が動いて地形が変わるかもしれない。

健はかっこいい役がフィーチャーされることも多いが、「平凡な青年が葛藤や苦しみを抱えながらも成長していく」「平凡な青年が周囲(人や出来事)に振り回される」というような役も彼の得意分野だ。「役に合わせてオーラまで変える」という特殊能力を持っている一方で、受けの芝居も抜群に上手い。身体能力も高いし、声もいい。顔もいい。俳優という職業で必要とされるほぼ全ての系統を100%引き出せている存在。常にエンペラータイム状態ということだ。しかも制約と誓約も発生しない。きっと俳優界のキメラアントを1人で殲滅できる。俳優界のキメラアントって何??

 

1位:緋村剣心(るろうに剣心)

健といえば剣心、剣心といえば健。俺たちの健がついに、世界中で愛されている大人気侍"緋村剣心"を3次元に連れてきてしまったでござるよ。

るろ剣実写映画はどれもアクションがエグくて、健の類いまれなるアクションセンスと身体能力のえぐさを嫌という程思い知らされる。あれは完全に人間やめてる。アニバーサリー本の中で「るろ剣後は大体どんなアクションにもしんどさを感じなくなった」的なこと言ってて、この人まじやばいなと思った。もう人類という枠で括ってはいけない。究極生命体、アルティメット・シイング・健だ。

そして"剣心を自分のものにしてる感"もえぐい。剣心の口癖「おろ?」の言い方が完璧だし、通常時と人斬りモード時のギャップもたまらん。好き。

 

今日で33歳になった佐藤健。彼は今後も世界を震撼させ続けていくのだろう。健が揺らした結果、地形が変わった地球を見られる日も近いかもしれない。とりあえず、健の実家の方向に1日1万回・感謝の正拳突き。感謝するぜ。健と出会えたこれまでの全てに!!

【彼女はキレイだった】樋口と残酷な世界

その日、人類は思い出した。当て馬が辿る残酷な運命を…当て馬派が味わう屈辱を…。

 

7月某日、向井理シャッチョ(着飾る恋)のトルコ左遷を受け落ち込んでいた当て馬愛好会に朗報が舞い込んだ。なんと関テレ枠に韓国ドラマ原作の素晴らしい当て馬が現れたのだと言う。

韓国ドラマといえばカン・シヌ(美男ですね)やチャン・グンス(梨泰院クラス)などを輩出した名当て馬の宝庫。当然期待度はめちゃくちゃ高く、ハードルを超えるのは難しい。だが、その当て馬…"樋口拓也"はいとも簡単にウォール・アテウマ(当て馬に対する期待度の壁)を破壊し、俺たちの心のシガンシナ区に侵入して来たのであった…。

 

関テレ制作ドラマ『彼女はキレイだった』。原作はパク・ソジュン主演の同タイトル韓国ドラマ。

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あらすじ

子どもの頃は人気者の美少女だった佐藤愛(小芝風花)は冴えないフリーターになってしまった今の自分に自信を失っていた。そんな彼女の元に初恋の相手・長谷部宗介から「久しぶりに会いたい」とメールが届く。再会を楽しみにしていた愛だったが、待ち合わせ場所に現れた宗介は昔の面影(気弱で太っちょないじめられっ子)など皆無なスーパーイケメン(中島健人)に成長していた。幻滅されたくなかった愛は、代役として美人な親友・梨沙(佐久間由衣)を宗介の元へ向かわせる。愛は梨沙を通じて「明日からイギリスに留学する」という嘘をつき、美しい思い出を壊さないよう宗介とは二度と会わないと決意する。それからしばらくして、ファッション誌の編集部で働くことになった愛。しかし、そこには副編集長として君臨する宗介が…!!

 

 

樋口は主人公に色々教えたり元気付けたりするイケメン先輩編集者ポジション。演じるのは国内外に大量のファンを抱える人気俳優・赤楚衛二。流され受け平凡会社員(出世作チェリまほでの役柄)のイメージを払拭し、明るく軽めな元気系茶髪爽やかイケメン先輩を見事に演じきっている。

 

主人公に「ジャクソン」という謎のあだ名をつけて可愛がり、主人公(愛)とその親友(梨沙)と副編集長(宗介)の関係性をいち早く把握し、時に主人公の愚痴を聞き、時に主人公を励まし、時に恋敵を煽り、時に告白をスルーされ(不憫)、物語中盤でイメチェンしてかわいくなった主人公に対して「前のくるくるも好きだったな〜」的なことを言う。「見かけじゃなくて心を抱いて」を体現する最高最強のMonster当て馬、それが樋口という男である。

樋口ならきっと生まれ変わってもまた佐藤愛を探してくれる、なんなら前前前世から探し続けてくれる、100年先も愛を誓うどころか1万年の愛を叫んで俺たちの佐藤愛を幸せにしてくれる。そう思っていた…7話が放送されるまでは。

 

大雨の中、ボヤ騒ぎに巻き込まれた佐藤愛の元に走る樋口と副編集長。到着が遅れたせいで愛にハグする副編集長を目撃してしまった樋口は、雨の中で傘もささずに立ち尽くすしかなくなる(可哀想)。そして愛も副編集長と梨沙の密会(?)を目撃してショックを受け、2人を避けるようになる。夢ならばどれほど良かったでしょう。

 

その翌日、副編集長から逃げるための言い訳に使われて喜んだり、副編集長と梨沙のことを相談されたり、「ジャクソンが幸せになってくれたらなんでもいいんだけどさ」と言ったり、「その気がないなら無駄にドキドキさせんなよ」「俺、ジャクソンにとって最高の友達を目指す」と言ったり……と当て馬ポイントを積み上げていく樋口。ソロポイントは8000を余裕で超え、もうとっくにマスタークラスのA級当て馬である。

 

更に、自分の体調が悪い中、梨沙に「佐藤愛は君と副編集長が会ってることに気づいてる。君が話してくれるのを待ってるよ。」と伝えるなど、まさに"ジャクソンにとって最高の友達"を体現するような行動を起こす。

 

いくらなんでも良い奴すぎる。もう少しずるく生きても良いのに。だから当て馬なんだよ。でもそういうとこ好き。

 

その後、副編集長との恋愛イベントとか仕事での成功とか色々なことが起こるが、樋口の恋模様とはあまり関係がないので割愛する。本編を見てくれ。

 

そして問題の7話終盤。樋口が熱でふらついた拍子に階段で足を滑らせて頭を打ったこと、その原因がボヤ現場に自分を迎えに行って雨に濡れたことだと知った愛は、樋口の元に向かう。そんな愛に対して樋口は……

「悪いことしたな〜って思ってる?いいね〜〜!もっとどんどん俺のこと気にかけてよ。」

「いつも思ってたからさ。何かの間違いでジャクソンこっち向いてくれないかな〜って。」

「3つ目のお願い聞いて?今からすること許せ。」

 

「やっぱ友達なんて無理だ。俺にもチャンスくれないか?俺たちなら…絶対楽しい。」

 

し、進撃の樋口だ!!!!!!!!!!!ついにやってきたぞ樋口のターン!!!!!いけ樋口!!!!頑張れ樋口!!!!ジャクソンの心のウォール・マリアを破壊して本命になるんだ!!!!!…………と視聴者が盛り上がる中、愛のスマホに着信が入る。このタイミングで着信…?待て、もしかしてこれは…やめろ…やめてくれ…そんな…まさか…そんなことがあって言いはずが無…

なんてこった。

 

副編集長「どういうつもりだ?佐藤愛!この16年間…君にどれだけ会いたかったか!!」

愛「……宗介……?」

副編集長「今どこにいる?」

ようやく愛の正体(初恋の相手であること)に気がついた副編集長からの電話。心揺れる愛。焦る樋口。

樋口「行くな…!」

愛「………ごめんなさい。」

 

このタイミングで流れるんじゃねぇよハイドレンジア!!!!!!なにがアジサイだ!!!!こっちの頭の中では紅蓮の弓矢が流れてんだよ!!!!!踏まれた花の名前も知らずに地に墜ちた鳥は風を待ち侘びるんだよ!!!このSexy Zoneめ……めちゃくちゃ名曲だな!!!!シングル買ってやろうか!!!!

 

樋口はこれまで散々善人ムーブを重ねて徳を積んで来たんだぞ!!!そんな男がやっと伝えられた本心と決めた覚悟と最初で最後のワガママくらい全うさせてやってくれよ!!!!

しかも次回予告の樋口、なんか職場辞めてたっぽいよ??いくらなんでも慈悲がなさすぎる!!!樋口は雅志か??雅志なのか??(雅志とは→2019年のドラマ『初めて恋をした日に読む話』に登場する伝説の当て馬。最終的にロシアに飛ばされる。)

 

樋口は本当…前世で何したんだ…???村を焼いたり、巨人の力でパラディ島を侵略したり、キメラアントの王としてNGLで大暴れしたり、呪詛師になって呪力のない猿共を殺したりしたのか…!?だとしても現世の樋口には何の罪もないだろうが…!!樋口を救ってくれる存在…誰か…誰かいないのか…?

 

そうだ。町田啓太を連れてこよう。

10月スタートの新木曜劇場『SUPER RICH』での町田啓太との再共演、とても楽しみですね!!赤楚衛二先生の次回作にご期待ください!!!

【ハコヅメ】この世で一番面白い警察漫画の話をしよう

ドラマ版も絶賛放送中の警察漫画『ハコヅメ』がめちゃくちゃ面白い。

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1日24時間のうち20時間はハコヅメ読んでたいし、全人類にハコヅメ全巻送りつけて布教したいし、義務教育の必修科目にハコヅメを追加したい。でもただのコマ(弱小会社員)である私にはそんなことできる時間も財力も社会的地位もないので、ハコヅメの面白さについて語ることでどうにかこの欲を押さえつけようと思う。

 

※原作・ドラマ版の大筋に関わる重大なネタバレはできるだけ避けてます

 

①リアルな警察官達の姿

ハコヅメで描かれる警察官のリアルさ・親近感は他の刑事ドラマ等とは比べ物にならない。

それもそのはず、ハコヅメの作者である泰三子先生は元女性警察官であり、作品には実際に彼女が一緒に働いてきた警察官の姿や経験してきた出来事が反映されているのだ。警察官から漫画家というのはなかなか珍しい経歴だが、泰先生は漫画を描き始めた理由として「警察の広報」をあげている。

gendai.ismedia.jp

「育休から復帰したら警察官の募集の広報に力を入れて、警察官の負担を減らしたい」と思うようになったんです。高校生の社会科見学を担当したことがあったんですけど、「警察官になりたい人はいますか?」と聞いたら、誰も手を挙げなかった。

一人だけ、手を挙げかけた男の子がいたので聞いてみたら、「前は警察官になりたいと思っていたけど、親に『自分のことも一人前にできないのに、人を助ける仕事ができるはずがない』と言われてあきらめた」と言うんです。内心、「そうじゃない! そんなに立派じゃない人たちが、ただ一生懸命にやっているだけなんだよ!」と思ったんですけど、そのときはうまく返せなくて。

そこから、「あの男の子みたいな人たちに、どうすれば警察の仕事を伝えられるだろう?」と考えていたんです。文章だと、たぶん若い子は読んでくれない。じゃあマンガだと読んでくれるんじゃないか。でも私みたいな下っ端が、広報でマンガの企画を立てても、絶対に決裁はおりない。じゃあ『モーニング』みたいな有名な雑誌に載ったら、みんな読んでくれるんじゃないか? そう思って、1ページのマンガをモーニング編集部に送ったのがきっかけです。

(インタビュー記事より引用) 

 

元警察官が「警察官志望者を増やしたい」「警察のリアルを伝えたい」という思いで書いている漫画。だからこそハコヅメには「そんなに立派じゃない人達が愚痴を言いながらも一生懸命仕事をする」描写が多い。

 

例えば交通取り締まりの回では「どうせ来るならクソ野郎」「警察官だって人間なんだから!せめて気持ちよく切符切りたい!」という人間らしい台詞が飛び出している。

ちなみにこのエピソードが載っている1巻、初期の帯はこんな感じ。

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天才かな??

 

また女性警察官特有の苦労が多く描かれているのも今作の特徴の一つ。その中でも特に印象的なのが「トイレに行くタイミングが限られている」問題。

 

そもそも警察官は山奥での行方不明者捜索や夏祭り会場の警備などトイレがない場所での勤務が多い。さらに女性警察官は装備の関係上、警察署以外でトイレに行くことができない。そのため現場での仕事では常にトイレの問題が付き纏う。

 

なお泰先生は週刊漫画家に転職した感想として「好きなタイミングでトイレに行けるから天国」と答えている。

gendai.ismedia.jp

警察官のお堅いイメージを覆すような親近感爆発エピソードは他にもたくさん描かれている。

 

夜パトロールの怖さを歌で紛らわせたり

 

サイレンにあてられて署長の車でワイルドスピードしたり

 

疲れすぎてマウンテンゴリラ先輩と深津絵里を見間違えたり

 

高校生の取調べで絆されたり

 

詐欺師の頭の良さに週8でビビったり

 

「教官のヘルメットの下は小栗旬」と思い込むことで地獄の教場をやりすごしたり

 

大事な場面で盛大に噛んだり

 

踊る大捜査線のテーマを着メロにしたり

 

ニュースの「警察は何もできなかったでしょうか」にムカついたり

 

(当たり前だけど)警察官も私達と同じ人間なんだなぁと気付かされる。

 

でも彼らは愚痴や泣き言を言うだけではなく、然るべきタイミングではかっこよくて頼りになる姿も見せてくれる。

 

この"親近感"と"かっこよさ"のバランスが絶妙でクセになる。

 

②魅力的なキャラが多い

 ハコヅメは親近感とかっこよさと個性とやばさを全取りした魅力的なキャラクターで溢れている。

 

"警察感"の無さと大胆な言動が魅力の大型ルーキー川合麻依(演:永野芽郁

 

美女2割ゴリラ4割おじさん4割ミスパーフェクト巡査部長・藤聖子(演:戸田恵梨香

 

愛すべき"良い奴止まり"捜査一係のわんこ山田武志(演:山田裕貴

 

どんな奴でも手玉に取るヤベェ毛玉・捜査一係巡査部長の源誠二(演:三浦翔平)

 

推し(新撰組司馬遼太郎)の力で自分を騙す・捜査一係の牧高美和(演:西野七瀬

 

愉快な部下達に振り回される熊・副署長(演:千原せいじ

 

真っ直ぐな目をしたクズ伊賀崎交番所長(演:ムロツヨシ

 

そして(現時点では)ドラマ版に出演していないキャラクターの中にも”おもしれー奴”がたくさんいる。

 

クセが無さすぎてドラマ化を逃した捜査一係巡査部長・那須(牧高のペア長)

 

発言の6割がR15、生活安全課のクノイチ捜査官・黒田カナ

 

「趣味は交通取り締まり」交通課の白バイ巡査部長・宮原三郎

 

弱小戦国大名系エリート交通課長・秀山

 

何かがぶっ壊れている爆イケ捜査二係巡査部長・如月昌也

 

24歳3児の父、生活安全課の子育てアドバイザー益田

 

ネチネチ職質で市民をイラつかせる天才・敷根

 

手錠の練習台になりがちな留置係・上杉

 

公安の人

 

物語が進むにつれてキャラクター達の勤務態度・人間性・所属・人間関係などが変化していくのだが、予想外な奴が予想外な方向にぶっ飛んだり、予想外な奴が予想外の奴と予想外なことになったり、予想外の因縁や過去が発覚したりするので、色んな意味で安心できなくて楽しい。

 

③多種多様な仕事の描写

多くの刑事ドラマでは特定の部署(主に刑事課)の重大現場しか描写されないことが多い。

 

しかしハコヅメでは地域課(交番)・刑事課・生活安全課・交通課など様々な部署の多様な仕事が描かれている。

 

防犯カメラ精査、夏祭りの警備、職務質問、鑑識、万引き、裏物DVDの精査、野生動物との戦い、逮捕術訓練、JAPPAT(警察官の体力テスト)、学生への講話、振り込め詐欺対策の広報、不適切事案の防止対策、ワールドカップのたびにスクランブル交差点の警備をするやつ、落書き事件…

 

このような「身近にあるけど現場で警察が何をやるのかは意外と知らない」「一般人は存在自体を知らない」仕事や訓練を分かりやすく面白く描いてくれているため、身近にいるお巡りさんや何気ない(ように見える)事件のニュースにも興味を持てるようになる。

 

また仕事描写は作者の実体験に基づいたものも多く、6巻収録の「ガサ現場で性具を発見してしまった話」もその一例である。

 

ガサ現場や職質現場に「子どものエロ本見つけちゃった…」系の気まずさが漂うことがあるなんて想像すらしたことなかった。全国約30万人の警察官の皆様、毎日お疲れ様です。ありがとうございます。

 

④シリアスとコメディのバランスがすごい

ハコヅメにはコメディ描写が多い。 

張り込み捜査が「デート中に同僚達が張り込んでる飲食店に乗り込んでしまう」コントになったり

 

通常点検が笑ってはいけないやつになったり

 

ピストルを撃つかどうかの瀬戸際で間抜けな姿になってしまったりする。

 

一方でシリアスパートのクオリティも高く、つらい事件や事故に打ちひしがれることもある。Twitterで広く拡散された「チャイルドシートの漫画」はその代表例だ。

 ハコヅメの中では珍しくシリアスに全振りしたエピソードで、交通事故の危険やチャイルドシート使用の重要性が伝わってくる。

 

また性犯罪も題材として頻繁に扱われている。デリケートな性犯罪事件をエンタメ媒体で扱うのは難しく、「性的加害を軽く見ている」「性犯罪をエロとして消費している」という評価を受けている作品も存在する。その中でハコヅメは性犯罪と被害者とそれに対応する警察官を真摯に描きながらも、エンタメとして成立させている。

 

作中では「供述をしっかり理解するためにエロ用語をマスターしろ!」というコメディ系の描写から、「性犯罪立証の難しさ」「聴取によって被害者を更に傷つける恐れ」「被害を隠したり小さく話したり聴取を拒んだりする被害者の感情」「幼少期の性犯罪で受けた傷を引きずる大人」などのリアルな苦しみの描写まで幅広く描かれている。

 

また、「被害者に原因を求める人が多い」「被害者への誹謗中傷が起こりやすい」という性犯罪の傾向にも向き合い、「犯罪は加害者が悪い」「被害者を更に傷つけるようなことはしないでほしい」という主張を提示している。

 

このように温度差のある詳細な描写と事件・事故に対する真っ当な主張を積み重ねることで「事件や事故を真摯に描いているのに重くなりすぎない」という絶妙なバランスを保っている。すごい。

 

一方で最近のエピソードは「コメディパートかと思いきや超シリアス展開への伏線だった」パターンも多く、読者の情緒を不意打ちで狂わせてくる。この「(倫理的には)安心できるけど(展開としては)安心できない」構造により、「軽い気持ちで読み始めたのにいつの間にか沼にいた」ファンを量産しているのがハコヅメの恐ろしいところである。

 

⑤伏線がやばい

これまでも少し話したように、ハコヅメは予想外の展開が予想外のタイミングで起こることが多い。

 

所謂「初読時はもちろん面白いけれど、真のすごさが伝わってくるのは2回目以降」タイプの漫画で、何回読んでも新しい発見がある。

 

初見では気づけないような伏線仕込み、伏線回収のタイミングと手法の気持ちよさ、すぐに読み返したくなる感じ…などは『進撃の巨人』を彷彿とさせられる。

 

一方でドラマ版は(現時点では)原作よりも、伏線が見えやすくなっている。ドラマ版は原作よりも多くの人の目に触れるため、ある程度の大衆性が必要となる。より多くの人に「続きが気になる!」と思ってもらうために伏線の分かりやすさは必要だ。

ドラマ版での変更点は妥当だが、原作の一つの魅力である「伏線のやばさ」は弱くなっているので、ぜひ原作の方で体感してもらいたい。

 

⑥ペアが尊い

今作の主人公である川合と藤はそれぞれに恋愛フラグもあるものの、それ以上に2人の関係性が尊いことに定評がある。

 

パーフェクトゴリラ系巡査部長と鬼のメンタルを持つ大型ルーキーの女性ペア。最初は「掛け合いが面白い自然体コンビ」くらいの印象だった。

 

しかし物語が進むにつれ、「川合は藤の姿を見ながら警察官として成長し、藤は川合の成長を見守ることに喜びを感じる」そんな良きペアになっていく2人。

 

そして「彼氏ができないように張り付く」「特別扱いを喜ぶ」「相手の好みに合わせて髪型を決める」「相手の喜ぶ姿が仕事のモチベーションになる」など、互いに対するクソでか感情描写が増えていく。

 

そして中盤からは少女漫画のような胸ギュンコマもどんどん増えてきている。一生一緒にいてくれや。

ドラマ版でも藤・川合ペアの尊さは健在。「川合の服を一緒に選ぶ藤」という原作未収録のイチャイチャまで飛び出している。戸田恵梨香永野芽郁が原作のあれやこれやをやってくれる可能性があると思うと、身体中の血液が沸騰しそうになる。ありがとう世界。

 

ちなみにもう1つのメインペアである源・山田ペア(通称モジャツン)は「クソ毛玉呼ばわりしつつも、本当は誰よりも源を信頼・尊敬している山田」と「そんな山田を"絶対に裏切らない存在"と認識し、めちゃくちゃ執着している源」という関係性。

 

相互激重感情っぷりがエグい。しかもこの2人は同室で暮らしてる。やばい。

 

 

…とこのように魅力たっぷりの警察漫画『ハコヅメ』はモーニングで絶賛連載中。「コミックDAYS」からも読むことができる。コミックスは既刊17巻。最新18巻は8/23に発売される。 

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また生活安全課の女性警察官・黒田カナを主役に据えた別章『アンボックス』もシリアスの傑作なので、ぜひ本編17巻の後に読んでもらいたい。

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ちなみに私はアンボックス読後2時間ほど涙がとまらず、泣き止んだ後も3日くらいがっつり引きずった。心して読んでくれ。

 

そしてドラマ版は永野芽郁さんのコロナ発症の影響で撮影が中断。特別編が放送される。

原作が大切にしていることをしっかりと理解した上でドラマ媒体に合うように再構築しているめちゃくちゃ良い作品なので、原作既読者も未読者もぜひ観てほしい。そしてドラマきっかけで興味が湧いた人は是非原作も読んでもらいたい。

【着飾る恋には理由があって】レアキャラ向井理と強すぎる横浜流星

向井理が好きだ。まず顔が好き。そして声も好き。スタイル良すぎて距離感がバグるのも好き。顔が豆粒で脚の長さが常人の5億倍なのも好き。そんな完璧ルックスなのに妙にリアルなキュンを投げつけてくるのも好き。特に『わたし定時で帰ります』の向井理生物兵器向井理の「うち来る?」を巡って第5次向井理大戦が勃発したのは記憶に新しいだろう。

 

そんな向井理が火曜ドラマ『着飾る恋には理由があって』にレギュラー出演するという一報が入った時、世界は大いにざわついた。

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わた定ぶりの火曜10時向井理。ヒロイン(川口春奈)の片想い相手。役職は社長。もちろん嬉しい。キラッキラシャッチョな向井理が画面に映ることを想像するだけで10000年は生きられる。でもこれは流石に他のメイン男性出演者が大変なんじゃないか…???

 

そう、このドラマにおいて川口春奈の正規の相手役は恐らく向井理ではない。横浜流星なのである。向井理はあくまでも当て馬(多分)。ヒロインの最初の想い人というアドバンテージがあるのにタイミングの悪さによって当て馬になってしまうイケメン、所謂"三浦翔平枠"というやつだ。でも今回の三浦翔平枠は三浦翔平ではない、向井理なのだ。「あの向井理が当て馬…?まあホタルノヒカリ2では当て馬やったけどさ…令和に当て馬の向井理は想像できんわ…向井理しか勝たんくない…?」そう思ってしまうのも無理はない。確かに横浜流星は顔がいい。売れっ子で実力もある。あと物理的にすごい強い(極真空手世界チャンピオン)。美・金・力の全てを兼ね備えた最強の人間だ。でも流石に向井理には勝てないだろ…。そう思っていた。ドラマを見るまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

向井理、全然出てこん。

とんだレアキャラだった。

 

向井理シャッチョは1話で社長の椅子から引き摺り下ろされ、川口春奈と視聴者の前から姿を消した。今はどこで何をしているのかよくわからない。たまに回想の向井理が差し込まれるものの、それはあくまでも過去の向井理。春奈も視聴者も今の向井理のことは何も知らないのだ。twitterは「サブリミナル向井理」「向井理のいない世界など夏休みのない八月のよう」「いつでも探しているよどっかに向井理の姿を」などの悲鳴で溢れかえり、世界は深刻な向井理不足に陥った。

 

それでも、たまにやってくる回想の向井理は特大の爆弾となり、我々の心臓にクソでかい風穴をぶちあける。蝶ネクタイ×ドットサスペンダーの向井理はこの世の奇跡だし、向井理から贈られてくる花束にはダイヤモンド以上の価値がある。うなぎ×向井理なんて最高×最高すぎて意識飛んだし、向井理からの”使える奴”認定をもらう為に街中の傘袋を拾い集めた。だから私は向井理不足に苦しみながらも、TBSの方角に向けて1日1万回 感謝の正拳突きを行うことにした。

 

向井理を起用し、最高の演出をつけてくださった新井Pと塚原監督への感謝、向井理の最高な台詞を書いてくださった金子先生への感謝、向井理の衣装・ヘアメイクを施してくださったスタッフ様への感謝、向井理を最高にかっこよく撮ってくださったカメラマンへの感謝、向井理を支えているマネージャー様への感謝、向井理をこの世に産み落としてくださったご両親への感謝、そして向井理への感謝。感謝の対象はたくさんある。私の拳が音を置き去りにした頃、きっと向井理のエンペラータイムが訪れるのだ。

 

そんな混沌とした世界に差し込んだ一筋の光、いや一筋の流れ星が横浜流星だった。

横浜流星は約2年前、『初めて恋をして日に読む話』であの深キョン相手に大無双した男。私は生粋の雅志(永山絢斗)派だがユリユリの破壊力は身を以て実感していたし、今回も大暴れしてくれるんだろうな〜とは思っていた。そう、覚悟はできていたはずなのだ。

 

いくらなんでもやばすぎる。

 

好きな子に素直になれない小学3年生ムーブを繰り出したかと思いきや、デジタルデトックスとか言ってしれっと手を繋いだりする。明るくマイペースなのかと思いきや、グランメゾン東京のキムタクみたいな過去をチラつかせて、こちらの庇護欲を煽ってきたりもする。各話のラストに差し込まれる”ドラマのワンシーンを流星目線でプレイバックするやつ”なんて完全に見る違法ドラッグ。そして何よりも横浜流星は顔が横浜流星なのだ。横浜流星の顔なんて全人類が好きなのに、言動までキュンにされてしまってはキュンの過剰摂取で死んでしまう。

 

そんな流星、単体でも十分強いのにくそやばいスタンドも背負っている。

そう、主題歌担当・星野源である。星野源といえば「星野源が生まれて日本の音楽界と映像界の均衡が変わった」と言われるほどの特級エンタメ師。エンタメ界の五条悟。そんなやばい奴がドラマ終盤(流星無双時)に超絶名曲「不思議」を繰り出す。瞬間、春奈と視聴者はキュンの領域展開を目撃する。(流星の)何もかもが見える!!全て感じる!いつまでも情報が完結しない!!

流星と星野によるキュンの無量空処は向井理に飢えた我々をしっかりと捕らえた。輝いたのは鏡でも太陽でもなくて横浜流星星野源だったし、あの頑なで意地っ張りな私を変えたのは横浜流星星野源だった。Love Storyは歩き出すし、明けない夜はない。もう横浜流星エンドでいいんじゃないか。流星と春奈のイチャラブドラマのまま終わってもいいんじゃないか。向井理は我々が知らない所で既にクランクアップしてしまっているんじゃないか。そんな考えが頭を過ぎる。

 

否、私は向井理じゃなきゃダメなんだ。

向井理にしれっとキュンを投げつけられたいし、向井理の脚の長さと顔の良さに絶望したい。向井理のバックにも星野源が欲しい。全てを掻っ攫っていく向井理を前に立ち尽くすことしかできない可哀想な横浜流星が見たい。だから私は今日も拳を突く。向井理と彼の周りの方々とドラマ関係者への膨大な感謝の中に、ほんの少しだけ個人的な願いを込める。

向井理の出番が1秒でも長くなりますように。あわよくばハンターハンターの連載も再開しますように。」

【るろうに剣心 最終章 The Final】私の脳内に溢れ出した"存在しない記憶"

1年ほど公開が延期されていた『るろうに剣心 最終章 The Final』がついに公開された。

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無印・京都大火編・伝説の最期編を金ローやネトフリで履修した私にとって、今作とThe Begginingは最初で最後の劇場るろ剣。ちなみに邦キチ状態(原作を読んだことがなくて、るろ剣に特別な思い入れがない)なので、実写シリーズにでかい不満点はない。強いて言うなら斎藤一がずっっっと綺麗で左之助ばっかり血だらけになってることくらい。血濡れの江口洋介も見たい。でもあの綺麗さが斎藤さんの魅力でもあるからな…(原作読んでから語れ)

 

そんな記念すべき作品であんな思いをすることになるなんて、あの時の私は思ってもいなかったのである。

 

(以下ネタバレ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映画序盤の私「佐藤健のおろ?も聞き納めかな…さみしい…アクションくそかっこいい…健は相変わらず人間やめてるぜ…」

 

 

映画中盤以降の私「立て抜刀斎!!!!!!!人誅の時間だ!!!!!!!!見てて姉さん!!!!!!!」

 

 

雪代巴(有村架純)は私と雪代縁(新田真剣佑)の姉さんであり、緋村剣心は私たちから姉さんを奪った憎き男なのだ。

 

 

るろうに剣心 最終章 The Final』は雪代縁が、主人公・緋村剣心(人斬り抜刀斎)に"人誅"を下すべく頑張る話である。上海マフィアのボスになったり、抜刀斎を憎む連中を集めたり、牛鍋屋を燃やしたり、警察の偉い人の家を燃やしたり、なんか色々爆発させたり、薫殿を誘拐したり、左之助ボッコボコノルマを達成したり、刀狩りの張を殺したり(なんで張??)、藤原竜也軍団をぶつけたり、アームストロング砲をぶつけたりする。

そんな縁が剣心を憎む理由が"姉さん"こと雪代巴。巴は"許嫁(窪田正孝)を殺した抜刀斎"への復讐のために剣心に嫁ぎ、最終的には剣心に斬られる形でこの世を去った女性である。縁は彼女が剣心に斬られる瞬間を目撃して発狂、復讐を誓うことに。

 

緋村周りどんどん燃やしていいよ縁。

 

作中では縁と姉さんの想いや縁と姉さんの思い出(妄想っぽいのも含む)が色んな形で語られる。窪田の死に絶望する姉さん。儚げな雰囲気を纏って剣心に近づく姉さん。剣心との生活に幸せを感じてしまう姉さん。変わっていく姉さんを見つめる縁の目は切実で、見てるこっちまでしんどくなってくる。そして………………

 

縁「姉さん……ついにこの時が来たよ……」

 

瞬間、私の脳内に溢れ出した"存在しない記憶"。

 

許嫁を殺されて悲しむ姉さんを見つめる縁と私。

「抜刀斎に近づくなんて危険すぎるよ…」と思いつつも姉さんを止められない縁と私。

抜刀斎をかばう姉さんに「なんでアイツを庇うんだよ!!」と叫ぶ縁と私。

眠っている縁の手から風車をとって回す姉さんとそれを影から見る私。

雪の上に倒れる血だらけの姉さんを見て、叫ぶことしかできない縁と私。

抜刀斎への復讐を誓う縁と私。

上海で死にそうになりながらも執念で生き抜く縁と私。

 

全部、全部、抜刀斎が悪いんだ…!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなった

なんでラストるろ剣なのに存在しない記憶に振り回されてんの???なんで主人公よりラスボスに共感してんの???瀬田宗次郎のサプライズ登場とか激アツだったじゃん???敵かと思いきや手を貸してくれてさ???「僕もるろうにになったんです」とか語ってて超かわいかったじゃん???神木と佐藤の最高のアクションについて語りたかったはずだろ???どうした私????

 

 

これは有村架純の圧倒的な"姉さん力"に平伏してしまったのもあるけど、新田真剣佑の雪代縁があまりにも良かったというのがでかい。

アホみたいに良い顔面、芸術的な筋肉、アクションの悪魔と契約したとしか思えない動き、中国語、五条悟ちっくな白髪、歪んだ姉さん愛、小ささを極めたサングラス、そして筋肉(2回目)、全てが完璧である。身内の復讐のために物理的に強くなって、マフィアの長に登り詰めちゃうところも推せる。クラピカかな????

『サヨナラまでの30分』を観た時に「真剣佑はアキをやるために日本で俳優になってくれたのでは…?」的なことを思ったけど、雪代縁はそれを超えてきた。今作の8割は雪代縁でできているので、真剣佑ファンは100億%観に行くべき。真剣佑やばい。The Begginingも楽しみすぎる。

 

あと操ちゃんもいいぞ。

抜刀斎はどこだbotこと蒼紫様は(中の人が色々あったせいか)生死すら不明な謎扱いを受けてたけど、操ちゃんは想像以上に大活躍してた。土屋太鳳のアクションがやばすぎるので、うっかりファンになってほしい。